民法現代語化 改正されなかった条文/安全配慮義務

民法現代語化

改正されなかった条文/安全配慮義務

2007年11月22日 

安全配慮義務の発展過程

研究会では、安全配慮義務の条文化が検討されていた。

安全配慮義務の多くは、労働関係(雇用契約)の関係で問題とされ、その領域で発展したという経緯がある。だが、最高裁が安全配慮義務は、「ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきもの」(最判昭和50・2・25民集29-2-143)として、労働災害に限定する旨の説示をしていないことから、契約関係一般にも妥当する法理であるとされるものである。

研究会における審議

研究会では、規定を置く位置について「安全配慮義務を第415条に入れると、債務不履行の第4カテゴリーという問題になってくる。雇傭のところに置いてはどうか」(8回審議メモ)という議論があった。これによれば、623条(雇用)以下に規定を設けるのであれば雇用や労働関係についてのみの安全配慮義務の規定となり、415条あたりに規定するのであれば、契約関係一般に共通する規定ということになったと思われる。

そして、安全配慮義務については、雇用に入れるという方向(8回審議メモ)で16回に議論が引継がれることになった。

16回の研究会で、安全配慮義務については、他の懸案事項とともに「①物権的請求権への民法708条の準用規定を置くか(物権的請求権の規定を置くかの問題を含む)、②安全配慮義務の規定を置くか、③原理原則が置かれていない規定についてこれを補充するか、④定義規定を置くか、⑤損害の拡大等に関する過失相殺についての判例・学説による改正案を採用するかに関しては、将来の民法改正時の検討課題とし、今回の現代語化に当たっては、いずれも見送ることとする」という審議結果になっており具体的な条文化には至らなかったようである。

※本文中のリンクは、審議メモなどの当該議論の箇所にリンクしています。

※本文は、現代語化において、このような提案ならびに研究がなされたということであって、実際の紛争において研究会の考え方が裁判所等において受入れられるというものではありません。