民法現代語化 本稿の経緯と目的

民法現代語化

本稿の経緯と目的

2007年11月15日 

平成16年に民法現代語化と保証制度について国会で改正案が可決された。私は、それに先立ち、卒論のテーマを根保証にしており、法務省のホームページ上で公開されている議事録以外に資料があればと考えた。

そこで、情報公開で保証制度部会の席上で配られた資料と、当時、国会に同時に改正案として提出されていた民法現代語化の審議においても参考になるものがあればと考えて民法現代語化の議事録も情報公開で開示請求をした。

しかし、開示された民法現代語化研究会の審議メモは、平成3年から5年にかけてと意外に古く(当時は審議の過程が明らかになっておらず、これほど以前のものとは思っていなかった)、また、保証制度について触れられておらず、そのまま本棚に放置していた。

民法現代語化の改正については、いくつかの条文が、確立された判例・通説の解釈との整合性を図るための改正(パブリックコメントの補足説明)をされたが、現代語化の研究会の段階では、もっと多くの条文について「判例・学説による改正案」として検討されていたことが審議メモから明らかであった。

私自身、これを懐に抱え込んでいても生産的でないと感じていたこともあり、サイトにまとめることにしたものであり、将来の民法の解釈や研究に役立てばと考え審議の内容を明らかにするものである。したがって、本稿は、改正についての私の評価を加えるものではない。

Ⅱ.研究会について

 研究会は、法務省民事局長の私的諮問機関として第1回(平成3年7月18日)から第17回(平成6年1月7日)が行われ、民法1条から724条までを①片仮名、文語体の表記をひらがなに改め、②現代では一般に用いられていない用語を他の適当なものに置き換える、③確立された判例・通説の解釈で条文に明示的にしめされていないもの等を規定に盛り込むといったことを目的としていたものであった。

情報公開で開示された資料は、2回から17回までの研究会の内容が箇条書きになっている審議メモと研究会の席上で配布された法務省作成の資料がある。

本稿では、改正を検討された条文の全部を紹介することができないため、16回研究会で配布された「判例・学説による改正案(条文一覧)」(別表参照)に掲載されている条文の中から、更にその中で独自の判断で選び出したものを紹介する。

なぜ、この「判例・学説による改正案」に注目するかというと、私の推測の部分もあるが、審議メモや星野先生のお話1) と併せて鑑みると、研究会において、それぞれの分野の研究員(大学教授)が第一次案を作成して法務省に出向している検察官と分科会で議論した上で第二次案を作成し、それを全体会議で検討されたものと思われる。

審議メモには、研究会の全体会での記録しかないが、それによると5回までは改正作業の方針や用語の扱いの検討がされ、6回から15回において具体的な検討がされている。

この過程で、検討にかけられなかった改正案や検討されたが結論に至らなかった改正案が、15回終了の段階で数多くあり、16回の全員の出席の全体会議において集中的に審議するために「判例・学説による改正案(条文一覧)」というものが作成された。

問題は、この残った改正案の内容の位置づけであるが、重要度が高いと考えていたのか、単に後回しにされたものなのか、どちらかという点がある。

この改正案の中には、実際に改正された153条、162条、478条、660条の改正案があり、単なる後回しとはいえないからである。

1) 星野英一「民法現代語化をめぐって〈インタビュー〉星野英一先生に聞く」法学教室294号4頁以下