都道府県が購入するパトカーと覆面の値段

都道府県が購入するパトカーと覆面の値段

2013年4月6日 

全国に配備されている白黒のツートンのクラウン級のパトカーは、ほぼ99%、県によっては100%が国の予算で購入された国有財産です(ミニパトは自治体でも多く購入しています)。

また、交通取締りに使用される覆面も殆どが国の予算で購入されているものですが、こちらは割合に関しては捜査車両に該当するということで実態がよくわかりません。

とはいうものの値段くらいはということで、今回、都道府県が独自に購入したパトカーと覆面の値段について調べてみました。

■ 三重県

三重県では、覆面のみ独自に購入しているようです。売買契約書によれば、型式がDBA-GRS202-AETKHなので、3000ccの200系クラウンということになります。購入台数は一台で価格は4,526,847円です。

納入業者は三重トヨタ自動車という三重県にあるトヨタのディーラーです。

巷ではパトカーのカタログというものがあると囁かれています。しかし、FBIjobs.netがこれまで問い合わせた警察庁では取得していないとのことでしたが、今回、三重県からパトカーのカタログの一部らしきものが出てきました。

「II.資料編」というもので、「I.○○編」というのがあることも容易に推測できるのですが、そちらは取得していないとのことでした。「II.資料編」では、エンジン形式、型式、諸元表、メーカーオプション、販売店オプションなど詳細な記載があります。

とくにボデー色は、白黒のツートン(一般的なパトカー)の塗装色をトヨタでは「パトロールカートニング(ホワイト/ブラック)」と表記するようで、覆面は、市販車と同色ですが設定色が限定されているようです(7頁)。内装色はブラックのみで市販車と大きく異なるところです。

カラー色
市販車

警察仕様

パトロールカートーニング
(ホワイト/ブラック)
×
ホワイトパールクリスタルシャイン
×
プレミアムシルバーパール
×
シルバーメタリック
ブラック
ブラッキッシュレッドマイカ
×
シルキーゴールドマイカメタリック
ダークブルーマイカ
市販車の写真は市販車カタログより

また、今回、このカタログらしきものから、今まで何気に2500ccの無線警ら車の型式をDBA-GRS200-AETRHとしてきましたが、その詳細が判明しました。

DBA
排出ガス規制適合表示記号 DBA:平成17年基準排出ガス75%低減レベル車
GRS200
GRS201
GRS202
車種表示 GRS200:4GR-FSEエンジン、2WD車
GRS201:4GR-FSEエンジン、4WD車
GRS202:3GR-FSEエンジン、2WD車
A
車体表示記号 A:クラウンパトロールカー(ロイヤル)
E
ボデー形状表示記号 E:4ドアセダン
T
変速機表示記号 T:6速自動フロアシフト
R
K
グレード表示記号 R:制服パトロールカー
K:覆面パトロールカー
H
原動機仕様表示記号 H:DOHC、EFI直接噴射式

以上のような意味があるそうです(2頁)。ちなみに市販車のグレード表記記号はUまたはQです。また、扱いとしては覆面も「改造車」という扱いだそうです(同頁)。

・その他の資料

交通取締用四輪車(覆面)仕様書

交通取締用四輪車(覆面)売買契約書

平成24年8月1日 交通取締用四輪車(覆面)入札調査結果

■ 茨城県警

茨城県では、平成24年7月に交通取締用車を4台購入しており、価格は14,400,000円で、一台あたり3,780,000円、覆面を4台、価格は15,160,000円、一台あたり3,979,500円でした。

ただ、下記のものしか資料がなくて、2案件とも茨城トヨタ自動車と茨城日産自動車が入札に参加して茨城トヨタ自動車が落札したことしか判明しておらず、車種など詳しいことが不明です。図面やカタログなどの提出がなくても大丈夫かな、と思ってしまいます。

交通取締用車 車両仕様書

交通取締用車4台の購入 入札結果登録

交通取締用車 車両購入契約書

交通取締用車(一般覆面)車両仕様書

交通取締用車(覆面)4台の購入 入札結果登録

交通取締用車(覆面) 車両購入契約書

■ 警視庁

警視庁では、交通取締用四輪車と交通取締用四輪車(覆面)と機動隊に配備される遊撃警ら車というパトカーが平成23年に購入され、平成24年に納入されていました。

遊撃警ら車に関してもう少し詳しく述べると、国会の周りや警視庁前などの警備にあたっている機動隊員が使用する車両で、街中で不審者に職務質問などをする地域総務課に所属の遊撃特別警ら隊が使用する無線警ら車とは異なります。

・各車両について

最近、他の県警と異なり、警視庁はFBIjobs.netによる敷地内での車両の撮影の許可が下りないので、独自の車両の写真はないのですが、納車時に業者が撮影した写真がありました。警視庁では契約上、納車時に写真を撮ることになっているそうです。

これを見ると、白黒ツートンは国費で購入している交通取締用四輪車(2型)と同車のようです。ただ、散光式警光灯(赤色等)は、国費では小糸製ですが、警視庁は警視庁の仕様書によりパトライト製AWS-12LKFが搭載されています(仕様書では小糸製でもよいと書いてあるのですが)(仕様書3頁)。

覆面は、販売店オプションのサイドプロテクションモール(ドアの開閉時に傷付を防止)が装備されているのが特徴です。市販車であまり取り付けている方を見かけないので、警視庁管内で後部がスモークのブラックのボデー色の200系クラウンロイヤルサルーンをみたら、それは、この覆面かもしれませんね。

ところで、警視庁のパトカーといえば車両に「POLICE」の文字と警察手帳のエンブレムを模したカッティングが有名ですが、こちらは後から他の業者が貼り付けします。一台あたり15,800円です(カッティング仕様書7頁)。カッティング仕様書には図面もありますので、プラモデル等の製作の参考にもなると思います。


・各車両の値段

警視庁では、交通取締、遊撃警ら車ともに仕様書に「参考車種」として「トヨタ クラウン DBA-GRS202」と記載してあり、また、市販車クラウンの全高、全幅、全長をベースとした記載があります。たとえば全長「4,870mm前後」、全高「1,470mm前後」とありますが、日産スカイラインは全長4,780mm、全高1,450mmしかないので、「4,870mm前後」、「1,470mm前後」の許容範囲内か?ということになってくる他のメーカ車が参入しにくい状況にあります。

警視庁では仕様書作成に当たって、これらの数値を市販車のクラウンのカタログを基に作成したそうです。

では、価格を見てみましょう。入札には東京トヨタ自動車の他、東京トヨペット、日立オートサービスが参加し、東京トヨタ自動車が交通取締用四輪車10台、遊撃警ら車24台、交通取締用四輪車(覆面)1台を156,245.600円(1億5千6百24万5千600円)(税込み)です(入札経過調書)。

一台あたり、遊撃警ら車が4,200,000円、交通取締用四輪車(白黒)が4,250,000円、交通取締用四輪車(覆面)5,000,000円(いずれも税抜き)です(契約書内訳)。

・その他の資料

平成23年 警視庁 交通取締用四輪車 仕様書

平成23年 警視庁 交通取締用四輪車 図面

平成23年 警視庁 遊撃警ら車 仕様書

平成23年 警視庁 遊撃警ら車 図面

平成23年 警視庁 交通取締用四輪車(覆面) 仕様書

平成23年 警視庁 交通取締用四輪車(覆面) 図面

■ おわりに

平成23年に実施された警察庁の国の予算で購入された交通取締用四輪車は、トヨタ自動車の落札で一台あたり装備により異なりますが、2,470,200円~2,970,200円(税抜き)で(詳しくは「新型クラウンパトカー交通取締用四輪車の値段」)、同時期の交通取締用四輪車(覆面)、警察庁での正式名は「反転警光灯式」といいますが、こちらは2,542,000円~3,042,000円(税抜き)です(製作図面承認図)。

台数や購入元がディーラーということもあってか、どこも自治体でパトカーを購入すると高くなるようです。どれもパトカーが嫌いな方がこの値段を見ると憤慨すること間違いない値段ですね。

遊撃警ら車については特殊で、国である警察庁で購入していないので必要かもしれませんが、入札制度は業者が示した値段が高ければ買わない、という選択肢もあるわけです。

とくに交通取締用四輪車については警察庁での一括購入が一台あたり警視庁の購入の3分の2程度で購入しているので、必要ならば警察庁に掛け合って一括で安価で購入すべきではないかと思います。交通取締用四輪車10台とその覆面1台の合計47,500,00円という金額は、都内の交通が危険な箇所の修繕のための研究くらいなら使える金額です。

警視庁管内は、やたらと立ち番で交差点(警察官が常に違反が多い箇所に立っていて、違反車を取締るもの)の交差点での進路変更禁止等の取締をしているところが多いようですが、それを取締るより進路変更違反をなくす道路環境づくりや、交通事故が多発する地点でのより安全な道路環境の整備などの研究に充て、それを基に道路を管理する都や国と協議し道路環境を改善していくほうが、交通安全の向上に寄与し都民や他府県から来て都内を通行する皆さんのためになるのではないかと、正直なところ感じてしまいました。