200系クラウンパトカー(白黒)の値段(平成23年度)

200系クラウンパトカー(白黒)の値段(平成23年度)

2016年4月1日 

2012年5月4日 

2012年5月4日写真追加
2012年2月13日記事掲載

新型レガシィパトカーは、こちらの特集ページをご覧ください。

クラウンパトカーには、警察庁の国による調達によるものと都道府県の自治体の調達によるものとがあります。

22年度の警察庁の調達によるクラウンパトカー(国有無線警ら車といいます)は、全国にわずか4台で、その4台は200系クラウンパトカーという新型パトカーでした。ただ少ない台数のため街の中で目撃するには到底およばず、兵庫県と岡山県との県境に近い山間の町、兵庫県佐用町まで見に行きました。

200系クラウンパトカー

それから10ヶ月あまり、ついに街の中で目撃するようになりました。

そこで、いつものように気になって値段とその他、色々と調べてみました。

200系クラウンパトカー交通取締用四輪車はこちらのページをご覧ください。


■ 入札の経緯

平成22年12月16日、警察庁より無線警ら車(2WD)152台、無線警ら車(4WD)38台等の入札公告がされました。

パトカーは、適当な車に白黒のツートンの塗装に警光灯・サイレンを付ければ良いわけではなく、細かく共通仕様書および個別仕様書に定めがあり、これらを満たす必要があります。なお、納入する車両には、サイレンや散光式警光灯(赤色灯)などの装備を加工の上、取付けて納車することになっています。

警察では、近年、「組織犯罪対策、地域警察の機動力強化等」が図られ、それに伴う車両の整備を行なっています(平成21年度警察白書195頁)。

年が明けた23年2月8日に入札が行なわれ、参加した企業はトヨタ自動車のみでした。

下記の表は、警察庁が作成した競争入札比較表・競争入札比較表(4WD)をまとめたものです。この表に記載された金額に消費税等の5%を加算したものが契約金額になります。表にある「1台あたり」の価格は、比較表を基に台数で割ったものです。

回数
無線警ら車(2WD)

1台あたり

無線警ら車(4WD)

1台あたり

1
585,200,000 3,850,000 159,600,000 4,200,000
2
539,600,000 3,550,000 144,400,000 3,800,000
3
536,560,000 3,530,000 142,880,000 3,760,000
4
535,040,000 3,520,000 141,360,000 3,720,000
5
533,520,000 3,510,000 140,600,000 3,700,000
6
533,368,000 3,509,000
決定
 
7
533,064,000 3,507,000    
8
辞退
     

上記の表は、競争入札の結果をまとめたものですが、官庁の入札制度を存じない方には解りにくいかも知れません。

競争入札は、基本は複数の業者が参加し一番安い値段を付けた業者が落札します。しかし、そこには官庁が決めた予定価格(非公開)があって、業者が付けた価格がそれより上回った場合は落札に至りません。

それを今回の上記の表で見ると、今回の参加業者はトヨタ自動車のみですが、4WDでは1回目は一台あたり4,200,000円で予定価格より上で、5回目の一台あたり3,700,000円で予定価格より下ということで決定しました。

しかし2WDは、7回行うも予定価格より業者の付けた価格が上であったため落札に至らず、8回目の入札は参加業者、つまりトヨタ自動車が入札への参加を辞退したということです。

ここで困った問題が起きます。国、つまり警察庁は無線警ら車(2WD)を調達できません。そこで大きく二つの選択肢が法令等で定めがあります。

1.今回の調達をあきらめ、改めて入札公告をして入札業者を募る

2.随意契約(入札をしないでする契約)をする

今回は、会計法29条の3第5項を受けた決算予算及び会計令の第99条の2に基づき(警察庁広報課の話による)、随意契約のかたちで契約が進みました。

契約書によれば、契約価格は559,398,000円、一読できませんが5億5千9百39万8千円で、一台あたりのクラウンパトカーの値段は、3,505,000円(契約書記載額)です。

ちなみに3,505,000円のこの金額に対する5%を加算した金額(3,680,250円)に152台を乗じると(3,505,000×1.05×152=559,398,000)契約総価格になります。


その他、製作図面承認申請書がトヨタ自動車より提出されています。

入札時に参加業者は、図面やカタログを提出することになっていますが、パトカーのカタログについては、警察庁では「取得していない」とのことでした。

■ 納入

2WDと4WDともに平成23年12月22日を納期限として契約され、各都道府県にその期限までに納入されました。

各都道府県への納入台数は配分表に基づきます。

無線警ら車(2WD)配分表

無線警ら車(4WD)配分表

この配分表に基づいて配分された車両の各警察署等への配置は各都道府県警察に任されています。愛知県警では10台が配分され以下の通りに配置されました。


 地域総務課 1台
  自動車警ら隊 2台
  天白警察署 1台
  守山警察署 1台
  愛知警察署 1台
  西枇杷島警察署 1台
  津島警察署 1台
  豊田警察署 1台
  田原警察署 1台
以上10台

愛知県警の「新規国有無線警ら車の配置について」によれば、2004年に配備された170系クラウンパトカー(ゼロクラウンパトカーの一代前)の減耗による交換とのことです。

後に紹介する愛知県警自動車警ら隊に所属していた交換となったクラウンパトカーは、総走行距離が20万キロをはるかに超えていたそうです。

■ 性能

今回のクラウン・パトロールカーの型式は、「DBA-GRS200-AETRH」です。ちなみに市販車の型式は、「DBA-GRS200-AETQH」です。

諸元表によれば、エンジンは2,499cc、水冷・V型・6気筒・G、変速機は、自動前進6段・後退1段、変速機減速比4.100となっており、市販車の諸元表と同一でした。

その他、外観はCROWNエンブレムや王冠のマーク等の一切撤廃されています。

市販車の座席はグレードに応じて電動式が多いですが、パトカーの座席は手動です。


■ 警視庁

警視庁では、国有200系クラウンパトカーが49台(4WDを含む)活躍しています。配置先は、大井警察署、愛宕警察署、玉川警察署、高井戸警察署、富坂警察署、赤羽警察署(22年度入札・納車車両)、城東警察署、小松川警察署、各方面の自動車警ら隊などです。配置先詳細につきましてはパトカーデータベースを参照いただければと思います。また、近々、機動隊に都有の200系クラウンパトカーが配備されます。

写真撮影は、警視庁情報公開センターならびに愛宕(あたご)警察署にご協力を頂戴しました。ありがとうございました。

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■ 愛知県警自動車警ら隊において

現在、愛知県警察自動車警ら隊では2台の200系クラウンパトカーが活躍しています。

自動車警ら隊は、職務質問のプロと言われる警察の中でも運転テクニックと職務質問の技が必須とされる精鋭部隊です。その隊員の方に200系クラウンパトカーの使い勝手を尋ねたところ、ゼロクラウンパトカーに比べ同じ2500ccでも加速が格段に良いそうです。

普段、街中でパトカーを見るときは他のドライバーの模範となる安全運転ですが、事件現場への急行、不審者追尾においての緊急走行時には、卓越した運転テクニックの下にその性能に違いを感じるのかもしれませんね。

・運転席と助手席

一代前のゼロクラウンのときからクルーズコントロール(アクセルを踏まなくてもセットした速度を一定に保つ装置)が装備されていて、200系クラウンパトカーにも装備されていますが、隊員の方の話では、全く使ったこがないとのこと。

その他、エコモードなどの走行制御も付属していますが、これらは市販車の名残でしょう。仕様書には「クルーズコントロールを付けなさい」等とは記載されていません。

エンジンスタートは、スマートシステムによるもの、つまり、今、はやりのブレーキを踏みながらボタンを押すとエンジンが始動する市販車と同仕様のタイプです。

ちなみに22年度の予算で兵庫県警の佐用署に配備された200系クラウンパトカーは、旧式のカギを挿して回してエンジンを始動する市販車には存在しない仕様でした。

助手席は、無線機のみです。ナビ機能等を搭載した機器は、今後、予算が付いてから取り付けるそうです。


・後部シート

200系クラウンパトカー

シートは、仕様書のとおりビニールレザー張りで市販車のような本皮シートではありません。これは汚れが目立たないため清掃がしやすいように等の配慮からです。

また、普通乗用車の後部シートの真ん中によく付いている「ひじ置き」、センターアームレスと呼ばれるものは仕様書の通り取り付けられておらず、後部シートは一体のものとなっています。


・散光式警光灯

散光式警光灯とは、一般的に言うところの赤色灯のことです。180系クラウンパトカー(ゼロクラウンパトカー)では、仕様書に「散光式警光灯の規格は、(株)パトライト製AWS-12HMFQ型と同等品以上とすること。」と定めがあり、実際に搭載された警光灯もこの形式のものでした。

今回、仕様書が改訂になり「関係法規に適合するV型4灯式以上のもので、当庁の承認を受けたものであること。」に変更になり(その稟議書の画像)、警察庁調達の新型パトカーに搭載された警光灯は、小糸製作所製のものとなりました。ちなみに警光灯の操作、音を出す装置であるサイレンアンプはパトライト製です。


・愛知県警自動車警ら隊特有の仕様

前掲上記の画像の警光灯を昇降させる装置を格納するカバー前部に「119」の文字があります。

パトカーの屋根にも同じ「119」の文字があり、所属と号車を表しており、ヘリからの空中支援などで、春日井警察署の場合は「春1」等のような表記が屋根にあり所属と号車が一目でわかるようになっています。

しかしながらこの号車の表記は、愛知県警では一般の警察署に配備のパトカーは屋根とリアガラスのみですが、自動車警ら隊は特別に昇降カバー前部への表記と自ら隊のマークのステッカーの貼り付けを県警本部から特別に認められているとのことです。


・自動車警ら隊の活動

愛知県警自動車警ら隊は、愛知県名古屋市熱田区に拠点があり、パトカーの一日の平均稼動台数は20台くらいで、愛知県全域を管轄しています。

一日あたりの検挙件数は、2から3件の時もあれば二桁に及ぶ時もあるそうです。事犯の内容は、飲酒運転等の道路交通法違反から銃刀法違反、覚せい剤取締法違反など様々です。

自動車警ら隊では、パトカーを「国民からの預かり物」ということで、大切に乗るようにと指導されていて、いつも外観も中もきれいにするように心がけているとのこと。

掲載の写真で車内が汚れていますが、視閲式の式場が野球グラウンドで砂地なためです。

■ 掲載写真について

今回、愛知県警の年頭の視閲式において車内も撮影できました。しかし個人で楽しむのとは別に、不特定多数の方が見るインターネットに無断で掲載するわけにはいきません。

そこで愛知県警本部相談したところ、装備課からの返答は「配置先の判断でよい」とのことでした。

ということで、視閲式に参加していた自動車警ら隊に私の身元と掲載目的、営利目的でないことと掲載予定の写真を持って相談したところ、最初は掲載しないでほしいとのことでしたが、何度かお伺いして「視閲式で撮影したものだけなら一応、公開の場での撮影」ということで、了解を得ました。

ただし、その中でパトカーの自動車登録ナンバーと一部の写真は控えてほしいとのことでした。よって、ナンバーは加工しています。

更に改めて外観の写真のみ許可の下、敷地内にて撮影させていただきました。ご多忙の中、ご協力いただき誠にありがとうございました。

※警察庁および愛知県警の文章は、「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」又は愛知県条例に基づき開示されたものです。

筆者紹介

パトカー好きの某自動車会社のパトカーとは縁も所縁もない部署の技術屋さん。ちなみにIT職とも無縁。

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